SimpleFOCによるベクトル制御への誘い

Home > 電子工作 > SimpleFOCによるベクトル制御への誘い
すき 2
うんこ 0

前回はSimpleFOCで複数モータのI2Cマルチプレクサでの同一I2Cバスによるエンコーダ回転監視動作を確認しました。

そして I2Cマルチプレクサ

倒立振子や3軸姿勢制御モジュールで動作確認したのですがいずれも電流センスなしのクローズドループ制御で実施しました。

せっかくのSimpleFOCですから ここでは電流センシングを用いたベクトル制御 (FOC)を試してみました。

 

AudiostockでBGM・効果音を販売中!

FOC (Field Oriented Control)

FOCいわゆるベクトル制御はモータ各相の電流と回転位置をセンシングして磁石とコイルによる磁界が直交して一番効率よくトルクを得るよう回転を制御します。

ベクトル制御自体は以前ESP32にて動作を確認しております。

ESP32でベクトル制御 ーブラシレスモータ駆動への道9ー

↑ここではベクトル制御を理解し実現できたことで喜ぶにとどまり、クローズドループ制御との比較などをしてご利益の検証をすることを忘れておりました。

ここ最近の製作でもクローズドループ制御で十分に動作する倒立振子や姿勢制御モジュールに満足しその輝きに目がくらみ美しきエンジニア心を忘れておりました。

改めでここでベクトル制御のご利益を自身の体にぶち込みたいと思います。
世の中の人々がわざわざ電流センスしてまでやるんだからご利益がないわけありません。

比較検証

早速 クローズドループ制御とベクトル制御 (FOC) を比較してみました。

FOCの方は高速回転時にも負荷電流の増加が少なく高効率の回転が実現できているのが見て取れます。こころなしか応答もよく感じました。

電流センスなしのクローズドループは100rad/sec以上で電流が急増しました。
初期動作のモータを強制的に回してエンコーダのオフセットを測っていますが、この精度が高速回転時の負荷上昇につながっていると考えられます。

上の実験では以下を使用

モータ

 

磁気エンコーダ

 

コントローラ

 

比較によってクローズドループ制御ベクトル制御の差を明確に体感しました。
制御ブロックが以下のように変わるのですからご利益があって当然です。

先の動画では上記制御ブロックに更に指定回転速度とエンコーダによる実測速度でPI制御して回転速度一定にしています。

 
使用したMakerbase社製コントローラの電流センシングは以下のとおり3相の内の2相に抵抗を挿入してアンプで検知しています。

 

FOCのメリットを体に深く刻むことができましたので以下で応用して更に検証します。

倒立振子

早速ベクトル制御 (FOC)を倒立振子に応用します。

コントローラは前節の比較と同様にMakerbase社製のものでモータやエンコーダも同じですので直ぐに電流センシングを追加しての制御への変更が可能です。

応答が非常にいいです。
これは是非屈伸型にしてジャンプを楽しみたいですね。忙しなるでオイ

姿勢制御モジュール

以前製作した1軸姿勢制御モジュールをFOC化したいと思います。

 

こちらではコントローラにATOMS3を使用してモータドライバにはDRV8311Hモジュールを使用しております。

電流センシング用のピンを追加したいのですがATOMS3には既に余剰のIOピンはない。。

Seeed Studio XIAO ESP32S3

ピン不足を解消するためコントローラに XIAO ESP32S3 を採用します。

 

壊してしまったATOMS3からIMUセンサMPU6886子基板を取り出して XIAO ESP32S3 に搭載します。
これはもうねぇ定番工作!

 

無事にIMU搭載完了

姿勢制御動作(クローズドループ)確認

まずはXIAO ESP32S3でクローズドループによる1軸姿勢制御モジュール動作確認。
問題なく完全移植でけた

しかしこれをSHISEIGYO-1 FOCと呼ぶのは忍びない。。。

電流センシング

FOC制御実現のためにDRV8311Hモジュールの電流センシングピンを配線します。

 

DRV8311Hの電流センスは駆動トランジスタのローサイドで検出します。

アンプ内蔵のローサイド検出ですのでハードウェア的には簡単に利用できますが、検出には各相のスイッチングタイミングとの同期が必要で仕事が発生します。

しかし、SimpleFOCにはしっかりLowsideCurrentSenseクラスも用意されております。神!

ところが。。。

どうもうまく動かすことができず色々検証したところSimpleFOCのLowsideCurrentSenseと ESP32のWiFiが共存できない疑惑が発生しました。。

ネット検索しても同様の報告はないのですが姿勢制御モジュールでのFOC検証は一旦ペンディングとして調査進めます。

おわりに

ここではSimpleFOCによる電流センスベクトル制御 (FOC)について検証を行いました。

FOCのご利益を脳に刻み倒立振子においてもそのご加護をいただきました。

姿勢制御モジュールにおいては残念ながら新たにESP32によるLowsideCurrentSenseクラスの制約問題が発生したため今後調査進めます。

ローサイド電流検出についてはSimpleFOCを用いないで自身でも実施できるようにして将来のセンサレスベクトル制御実現の夢に繋げたいとも考えております。

それではまた

次の記事

SimpleFOC で倒立振子3

コメントはこちらから

メールアドレスが公開されることはありません。コメントのみでもOKです。

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください